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世界の人口高齢化:老いゆく人たち

欧州は、ベビーブーム世代の退職による社会的、経済的影響に備えて態勢を整えようとしています。しかし人口の高齢化は欧州にとどまらず、長期に及ぶ世界的なトレンドで、今後何世代にもわたって続いていくものです。(原文掲載日:2009/05/06)

ドイツでベンチに腰掛ける年金受給者
人口に占める高齢者の割合の高さが世界有数の国、ドイツでベンチに腰掛ける年金受給者(写真:ロイター)

長寿化は、私たち人類の成功の証だという考え方があります。医薬品、衛生状態および農業生産の改善に伴い、世界中で平均寿命が延びてきたからです。しかし長寿化と出生率の低下が同時に起こると、専門用語で「人口転換」と呼ばれる、出生率と死亡率が高水準から低水準に段階的に変化していく現象が生じます。

人口転換が引起こす最大の影響の1つが、人口の高齢化です。欧州では死亡率も出生率も、19世紀から低下していますが、出生率が一段と激しく低下したのは1960年代以降です。今や欧州では高齢者の数が多くなり、一方で新生児の数が少なくなったため、死亡率が再び上昇し始め一部の発展途上国の水準に近づいています。

現在、世界の「最高齢」国(65歳以上の高齢者が人口に占める割合が高い国)の上位20か国中、19か国が欧州の国々となっています。世界一の「最高齢」国となるイタリアは、人口の19%以上が高齢者です。この数字は2030年までに28%に達すると予想されています。

高齢化が特に顕著なのは欧州と日本ですが、これは世界的なトレンドとなっています。世界の他の地域でも、特にアジアと中南米を中心に、平均年齢が徐々に上昇しています。中国では出生率低下に伴い、高齢者人口が現在の8,800万人から2050年までに3億4,900万人に増える見込みです。

香港の嶺南大学アジア太平洋高齢化研究所(APIAS)のデイビッド・フィリップス氏は、次のように述べています。「西側諸国では過去150年間にわたり徐々に高齢化が進んできました。それに対し、アジア太平洋地域、特に東アジア諸国の変化は基本的にここ30年から40年で変化しています。」

中東およびアフリカ、特にサハラ以南のアフリカでは、人口転換のペースははるかに緩やかです。この地域は出生率が高いため、今後数十年間にわたり、高齢者の比率が4%以下にとどまる見通しです。しかし国連の予想によると、このようなアフリカを計算に含めても、2050年までには、世界の65歳以上の人口の大部分が、現在「発展途上国」とみなされている国に集中するようになります。

「広がる」高齢化の影響

人口高齢化は、現在そして将来の政府に多くの課題を突きつけます。その1つは、定年を迎える人の割合が高まるうえ、定年後の生活を楽しむ人の長寿化も進むなか、公的年金や社会保障制度をどのようにして維持していくかということです。

ベン・バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長は「今後数十年の私たちの経済や社会は、さまざまな要因によって形作られますが、おそらく人口高齢化ほど、単独で幅広い影響を及ぼす要因はほかにないでしょう。」と述べています。米国でも他国と同様に、大勢の「ベビーブーム」世代が定年を迎え、最初の社会保障給付金を受取ろうとしています。

新聞を読む中国の高齢者
新聞を読む中国の高齢者。中国の高齢者人口は2050年までに3億4,900万人にふくらむ見込み。(写真:ロイター)

バーナンキFRB議長はさらにこう語っています。「米国の人口構成においてベビー・ブーマーの数が突出している様子を表すのに『ニシキヘビが飲み込んだブタ』のイメージがよく使われますが、これは誤解を招きます。むしろ米国の人口は今後20年から30年間にわたり、段階的に高齢化し、その状態は、ベビーブーム世代が過ぎ去った後も続きます。」

日本の状況はさらに深刻です。2015年までに人口の4人に1人が高齢者になるのです。こうした人口構成の変化に伴い、日本の政府や企業は従来の年金、保健医療制度、および定年の見直しを余儀なくされるでしょう。また出生率の低下により、日本の人口は今世紀半ばごろまでに、現在の1億2,800万人から9,500万人前後まで縮小すると予想されます。これは労働市場、住宅関連業種、およびほとんどの消費財の市場に影響をおよぼすでしょう。

変わるライフプラン

マックス・プランク人口研究所の創設所長、ジェームズ・ボーペル氏は著書で次のように述べています。「長寿化は問題ではなく、現代文明の最大の成果です。しかし長寿化により、年金政策や社会保障制度の抜本的な改革が必要になります。また長寿化により余生をどのように過ごすかを個々人が考え直す必要があります。」

例をあげると、定年は、すでにイタリアとドイツで計画されているように、おそらく今後、引上げられるでしょう。また平均寿命の長期化に伴い、社会構造の変革やライフプランの大幅な見直しが必要になることも考えられます。2050年までに平均寿命が90歳に達する可能性があるドイツでは、人生の早い段階に子育て、教育、および娯楽の時間を多く作るために、パートタイムの仕事を通じて就労期間を70歳代後半にまで延ばすこともありうるとボーペル氏は提言しています。

高齢有権者数の増加に関して、慎重に扱うべきだが核心的な政治上の問題は、政府の年金・医療制度を、高齢者人口の増加という目の前の現実に、どう適応させるかということです。高齢に達した人の多くは、改革なくして国の制度が長続きするとは思えないと感じています。

しかし、子どもの数が減少しているため、人口統計学者は、特に家族の一員から介護を受けられる人が少なくなると予想しています。現に欧州、北米、およびアジアでは、一人暮らしの高齢者が、特に女性の間で増えています。

また、高齢者が自宅やコミュニティで生活を続けながら年を取っていくなか、増加する高齢者が医療や社会保障を受けられるようにする必要もあります。高齢者が独立して生活できるように個人の住居や公共施設を改良するには、何十億ドルもの資金が必要です。欧州はやはり、世界規模の変化をいち早く経験する可能性があります。欧州が人口高齢化に伴う課題を克服できれば、長寿化は本当に最高の成果になるでしょう。しかしそれができなければ、衰退の予兆になる可能性があります。

編集者:バルディス・ウィッシュ
原文掲載日:2009年5月6日

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