あなたは母国の南アフリカで多様性に富んだ経験を積んできたに違いありません。そうした経験はあなたにとって、どんな意味を持っていますか?
多様性(国の中心的価値としての多様性というべきかもしれませんが)は、活気にあふれ、前進する社会の重要な特徴の一つだと思います。
南アフリカで、アパルトヘイトの社会体制によって民族の統合が阻まれていた時代、私は幸運にも白人社会だけでなく国全体を代表する企業のトップの座にありました。その会社は国内市場で最も規模も利益も大きかったのですが、それはあらゆるコミュニティーから有能な人材を集めていたからだと強く思います。私は、共通のゴールとコンセンサスを重んじる意志があれば、多様性に富んだチームがどれほど強くなれるか、身をもって学びました。
アパルトヘイト廃止後の南アフリカにおける多様性について、どう見ていますか?
マンデラ大統領時代に南アフリカは自尊心を取り戻しました。一握りの特権階級のためではなく、国民全員のための国家へと生まれ変わったのです。マンデラは極めて重要な役割を果たしました。将来への不安が立ち込める中で、融和や寛容という価値を形にしてみせたのです。ただ、彼は一人ではありませんでした。多くの南アフリカ人が「虹の国家」実現のために手を取り合ったのです。
現在、南アフリカはさまざまな課題を抱えています。貧困層はなおも多く、どうすれば富や機会を公平に再分配できるのかという問題は解決されていません。エイズは蔓延し、犯罪率も信じられないほど高い。でもそれは多様性のせいではありません。むしろ、多様性は南アフリカにとって貴重な財産です。
それでは、多様性を生かす最良の方法は何でしょうか? 不利な立場にある人々を優遇するアファーマティブ・アクション(差別是正措置)プログラムが、有能な人材の足を引っ張っているという批判の声もあります。
南アフリカのアファーマティブ・アクションが有能な人材の妨げになっているということはありません。国の人口は4,000万人ですが、労働力の最上層にいるのはその10%の400万人です。もし、この400万人が桁違いに優秀だったとしても、残りの3,600万人の中にまったく有能な人材がいないと考えるのは理にかなっていません。
だから、私は有能な人材のための門戸を開放し、そこにたどりつくことを阻む問題に対処することが非常に重要だと思います。そうすることで、有能な人材の層は厚くなるでしょう。かつて一握りの特権階級だった有能な人物にとっても、悪い話ではありません。門戸を広く開いた結果、職をめぐる競争が激しくなるのはよいことです。私は多様性に富んだ社会こそが、持続可能な成果を生み出すと強く信じています。企業にとっても同じことが言えます。アリアンツには世界中から、さまざまな背景をもった人材がたくさん集まっています。これがアリアンツにとってひとつの大きな強みだと私は思うのです。
アリアンツの多様性について話が出ました。これまでにアリアンツの国際化、グローバル化については多く語られてきましたが、多様性に関しては注目されてきませんでした。なぜでしょうか?
実際のところ、多様性はアリアンツ、いや、金融サービス業界の大部分にとって決して新しいものではないのです。アリアンツは国際化が進んだ企業であり、多様化への道のりもゼロから始まったわけではありません。すでに、長い道のりを歩んできたのです。ただ、重要なのは、国際化と多様性が別物であるということです。
企業にとっての多様性とは何でしょうか? また、なぜ多様性は企業にとって重要なのでしょうか?
われわれが住んでいる世界は刻一刻と変化しています。人々は地球という大きな村の中で、かつてないほど移動しており、多文化社会も現代においては当たり前のことになっています。こうした中で、新しい顧客や同僚、株主を獲得する機会が生まれています。そして、多くの前例が多様性と業績の間に明らかな相関関係があることを示しています。多様化自体に価値があることはもちろんですが、社会のあらゆるグループの存在を反映することが、企業が成功するカギとなるのです。われわれにとっての多様性の意味はここにあります。
多様性とは、異なる民族集団をターゲットとしたものでしょうか?
基本的に、多様性というのは不利な立場にあるあらゆるグループを視野に入れたものです。しかし、近くにいながら、その潜在的なニーズをとらえきれていないグループについても言えます。論理的に説明しましょう。たとえば、顧客の50%以上が女性だったら、女性の考え方について調べることに意義があります。
同じことは、ゲイや障がい者といった他の顧客グループにも当てはまります。だから、私にとっての問題は、会社が今置かれている状況とめざすべき道を現実的な目で分析することです。企業は責任を負っている顧客や地域を代表する存在にならなければいけません。
異なる顧客層に対応するという点での多様性について、アリアンツで実践している例はありますか?
イスラム教徒向けのシャリア(イスラム法)商品や、高齢者向けの特別支援商品など、さまざまな例が挙げられます。アメリカでは、アリアンツ・ライフがヒスパニック系、アジア系、アフリカ系向けにそれぞれ特化した商品を導入しています。
女性の話が出ましたが、アリアンツでは、依然として女性は不利な立場にあるのではないでしょうか? この問題にはどのように対処できるでしょうか?
会社に入ったばかりの段階では、男女比はほぼ半々です。一方、組織のピラミッドの上方には、もちろん全体の人数そのものが少ないのですが、あまり女性はいません。状況は国によっても異なります。われわれがしなければならないのは、前進を阻む要因が存在するかどうか見出すことです。幹部は男性のほうがいい、などという声はなく、純粋に実務上の問題であるケースも多い。そうした問題を解決できれば、変化が起きるはずです。
子供を持つという決断が、女性のキャリア形成に響くようなことがあってはなりません。企業はこの点について対応する必要があります。すでにアリアンツでは実施していますが、たとえばドイツでは36か月の育児休暇をとってから職場に復帰することが認められています。小さなことの積重ねでよいのです。近場にもっと事業所を作れないのか? 女性が在宅でも参加できるプロジェクトはないのか? 学童のいる社員が早く帰宅できるように、夕方の会議をなくすことはできないのか?
企業文化を大きく変える必要はなく、すでに取組んでいることを助成、奨励していくことが大事だと思います。多様性の奨励を悪く言う声はありません。「リーダーシップ文化調査2006 (Leadership Culture Survey 2006)」でも、多様性を後押しすることが、当初からプラスの効果をもたらすという結果がでています。今やるべきことは、すでに始まっている動きにさらに弾みをつけてやることです。ただし、これは新規採用の話に限りません。人材をとどめるためにも、すでにある資源を有効活用するためにも重要です。そして、もちろん世の中に存在する差別や偏見と戦うことでもあります。
原文掲載日:2007年9月13日

