エイヤフィヤトラヨークトルの火山噴火は、欧州のほとんどの国で航空便が欠航になるという事態を招きました。こうした対応は必要だったのでしょうか?
火山灰は航空活動に非常に深刻な影響をおよぼす可能性があります。そのため、世界各地に設けられた「航空路火山灰情報センター(VAAC)」が、世界規模で継続的に火山灰の発生・飛散状況を監視し、必要に応じて拘束力のある勧告を発しています。
VAACは最新鋭の技術を用いてシミュレーションを行い、航空活動における100%の安全を確保するために勧告を出します。100%の安全という考え方が基本になっていますから、勧告は保守的で、広い地域を対象にしたものになる傾向があります。
こうした勧告が受入れられているのは、安全な空域の範囲を正確に定義することが実現不可能だからです。特定するには、空全体のあらゆる高度について安全性を測定しなければなりません。
また現状では、航空機に害をおよぼす火山灰の限界濃度についてもわかっていません。
アリアンツのような保険会社は、航空会社がこうむる巨額の損失で打撃を受けるのでしょうか?
今のところ、火山灰による事業中断は保険の対象になっていません。
対象となるのは、物的損害による事業中断のみです。つまり、大気中の火山灰により航空機に被害が生じ、その後の修理に時間がかかる場合のみ、(VAACが飛行禁止指令を発令していなければの話ですが)保険の対象となります。
したがって、保険業界がエイヤフィヤトラヨークトルの火山噴火の影響で、著しい損失をこうむることはありません。
火山はどれほど危険なものなのでしょうか?
隣接地域においては、極めて危険な存在になりえます。
影響はさまざまな形であらわれます。最も甚大な被害をもたらすのは火砕流です。高熱の火山砕屑物が高速で流下する火砕流は、進路上のあらゆるものを飲込みます。一方、溶岩流は流れるスピードが遅く、避難する余裕がありますが、建物を破壊する威力を持っています。
近隣地域がこうむる直接的な被害のほかにも、火山灰やガスが広範囲に広がり、健康被害をもたらす可能性があります。さらに、航空機の運航障害や運航停止につながったり、数か月、場合によっては数年におよび地球規模の気象変動を引起こしたりする恐れもあります。
最も危険な火山はどこでしょうか?
現在、危険とみなされている火山は16か所にあります。世界中に分布しており、インドネシア、ロシア、メキシコ、コロンビア、米国、日本、コンゴ、グアテマラ、パプア・ニューギニアのほか、欧州の4か所(イタリアのベスビオ山とエトナ山、カナリア諸島のテイデ山、ギリシャのサントリーニ島)に存在します。危険視されているのは、近隣地域に直接およぶ被害の大きさを考慮してのことです。
航空活動や気象への影響は、どの火山によっても生じる可能性があります。1815年に起きたインドネシア、タンボラ山の噴火の影響で、翌1816年は「夏のない年」と呼ばれる異常気象の年となりました。もっと近い例を挙げると、1991年のフィリピン、ピナツボ山の噴火で、世界の平均気温は0.3℃低下しました。
数か月にわたって航空活動や気象に影響をおよぼす大噴火が起きる確率はどのくらいでしょうか?
観測期間が短いため、統計学的にこの質問に答えること、具体的な数字を挙げることはむずかしいです。それでも、いくつかの前例からヒントを得ることはできます。
過去50年には地球規模の気象変動を引起こした噴火が3回ありました。1963年のインドネシアのアグン山、1982年のメキシコのエルチチョン山、そして1991年のピナツボ山です。
熱帯地域の火山噴火が世界的な気象変動を引起こす傾向があるのは、偶然ではありません。火山灰やガスが地球規模の大気循環によって広範囲に広がるからです。熱帯以外の地域での噴火が気象に与える影響はどちらかというと限られています。
過去40年に、火山灰が原因で起きた航空機の事故は100件以上報告されています。中でも深刻だったのが、1982年にインドネシア上空で起きたプリティッシュ・エアウェイズの事故と、1989年にアラスカ上空で起きたKLMの事故です。いずれの場合も、4基のエンジンがすべて停止しましたが、幸運にも安全着陸にこぎつけることができました。
噴火の被害に保険をかけることはできるでしょうか? そうした保険は誰にとって大事でしょうか?
保険の観点から言えば、噴火の影響で生じた物的損害は、他の場合の物的損害と変わりません。多くの国では、地震などの他の自然災害と共に、噴火のリスクは拡大保障の対象となっています。こうした保険はもちろん、火山のすぐ近くに住む人々にとって重要です。また、火山灰は噴火地点からはるかに離れた地域にも物的損害をもたらす可能性があります。
火山噴火のリスクはどのように評価できるでしょうか?
噴火はめったに起きるものではありませんし、状況はそれぞれ異なります。噴火で火山の形状が変化し、溶岩流の流れ方が変わってしまう可能性すらあります。
さらに、噴火の影響はその時点での気象条件やその他の状況によっても変わります。これらの理由から、地震や暴風のように確率論的なリスク評価モデルを開発することは、ほとんど不可能です。したがって、われわれは被害を受ける地域と潜在的な損害を見積もるために、決定論的なシナリオを用いています。
予防策としてはどんなことが考えられますか?
大型の火山砕屑物や溶岩流の放出などから受ける直接的な被害に関しては、予防策を講じることは実際にはほとんど、あるいはまったく不可能です。溶岩流の流出が緩やかで、経路も予測できる一部の火山については、溶岩流を誘導するための防壁を築く試みも行われています。火山灰対策としては、防塵マスクの常備、ドアや窓の目張り、ダメージを受けやすい機械類の保護などが挙げられます。
早期警戒情報を出すことは可能でしょうか? できるとすれば、どのような流れになりますか?
主要な火山はすべて、地震やガス放出量などの火山活動を計測する観測所や科学調査ネットワークによって監視されています。これらのデータを組合わせれば、早期警告情報を発することも可能と考えられます。
しかし、正確に予測することは非常に困難です。火山活動の様子はそれぞれの火山によって大きく異なりますし、調査・研究の進み具合もまちまちだからです。
原文掲載日:2010年5月17日

